2024年7月26日(金)に全国ロードショーとなるアニメ『劇場版モノノ怪 唐傘』。本作の完成披露試写会が行われ、神谷浩史さん・黒沢ともよさん・小山茉美さん・中村健治監督・山本幸治プロデューサーが涼やかな浴衣姿で登壇した。山本プロデューサーは「1年の公開延期がありましたが、ようやく完成しました」と感無量の面持ち。シリーズの生みの親である中村監督は「支援の輪が広がったことによって、ビジネス、クリエイティブの面でもいろいろな方々が集まってくれた。作品が大きくなるきっかけをいただいた」と支援者に感謝した。
主人公である謎の存在・薬売り役を演じた神谷さんは、「1か月くらい前に、監督が『これからまだ1300カットくらい直します』とおっしゃっている段階のものを観た。本作は全部で、2600カットある。90分のアニメーションのカット数としては、ちょっとどうかしている」と舌を巻き、「取り憑かれたように3回、連続で観ました。1回目は映像に圧倒され、2回目は細かいところまで観ようと思ったのに、いつの間にか時間が過ぎていた。それくらい濃
密」とこだわりの詰まった映像に惚れ惚れ。「3回目は、台本を見返しながら鑑賞して。そこで、台本にありとあらゆる答えが詰まっていることに気づいた。本作に携わって、僕はまだまだ台本の読み込み方が甘かったと思い知りました」と台本の完成度に驚きつつ、声優としても刺激をもらったという。中村監督は神谷さんの薬売り役に「深く納得がいっています」とにっこり。薬売りは変身する前と後で違った表情を見せるが、中村監督は「変身した後の薬売りについて『特にイメージがないけれど、変えてほしい』とお願いをして(笑)」と具体的な指示をしなかったものの、「本番は一発OKだった」とその演技のすばらしさを褒め称えた。また中村監督は薬売りというキャラクターの設定についても説明。TVシリーズを始める際、「作中の退魔の剣は64本あり、薬売りもそれに合わせて同じ数だけ存在するという設定を作った」と裏話を口にしていた。
大奥でキャリアアップを図る新人女中・アサ役の黒沢さんは、もともとシリーズの大ファンとのこと。本作においても好きなシーンが「いっぱいある」そうで、「今回は、薬売りさんのアクションシーンなど、カッコいいシーンがとても多くて。ビジュアル面での表現や、音楽とのハマり方もたまらない。この環境でご覧になるのがうらやましい」と今回映画館で観ることができる観客に向けてコメント。「後半のシーンは、すべての五感を溶けさせながら物語の中に入ってほしい。上も下も、わからなくなるような感覚もある」と特別な体験のできる映画だと熱っぽく語った。
大奥の最高職位「御年寄」を務める歌山役の小山さんは、「アフレコはめちゃくちゃ大変でした!」と告白し周囲も大笑い。「台本では、セリフが横書きされていた」と秘話を打ち明け、セリフやカット割りのスピードにも驚愕したという。「あまりにも速いので、台本のページをめくるのが忙しくて。(ページをめくる)ノイズが入ってしまうといけないので、全部セリフを書き出して。それをもとに挑戦しました。こんなことは初めてですが、頑張りました」と苦労を吐露していたが、中村監督は「小山さんに歌山役を受けていただけて、勝ったな!と思いました」と絶大なる信頼を明かした。
主題歌「Love Sick」を担当したアイナ・ジ・エンドからビデオメッセージも到着。完成作を観た感想として「色彩の展開の数の多さにびっくりしました。そしてなんと言っても、声優さんたちの命の声の吹き替えというのが、ものすごいなと思いました。画面で起こっていることなのに、目の前でささやかれているようなくらい、生々しい瞬間が多々あり、声優の方々のパワーを感じた」という感動の言葉と共に、「『凛として時雨』のTKさんが楽曲を作ってくださいました。とてもキーが高くて大変なんですが、もしよかったら一緒に歌ってもらえたらうれしいなと思います」という願いが込められていた。中村監督は「和風の作品なので、そういった音を意識していただいた。TKさんもたくさん質問をしてくれて、いろいろなやり取りをして。すごくいい曲が仕上がりました」と大満足の表情を浮かべていた。
イベントは七夕当日とあって、情念や怨念が取り憑いたモノノ怪が登場する作品の内容にちなみ、「情念を抱くほど切望する願いごと」をそれぞれが短冊に書いて発表。神谷さんは「健康第一」とつづった短冊を披露し、「切実です。若干いま、鼻声です。お聞き苦しい鼻声(びせい)を響かせています。
“声優殺すにゃ、刃物はいらぬ。風邪のひとつも引かせりゃいい
”という感じ」と名フレーズを作り出して会場の笑いを誘った。黒沢さんは「モノノ怪Tシャツがほしい」、小山さんは「すべての邪気を祓い、この星を平和な星に」と希望し、中村監督は「薬売りさんにたくさん会いたい!」とお願い。
“実は薬売りはたくさんいる
”という設定がありながらも、「まだ全然、会えていない。残りの人生をかけてなんとか…」とさらなる続編への意欲を見せていた。
エンディングではそれぞれよりメッセージが送られた。神谷さんは「劇場で観るにふさわしい映像に仕上がっています。まず1回目は圧倒的な映像に身を委ねて、時間を過ごしてください」と改めて完成作に胸を張り、小山さんも「アニメーションというよりも、アート」だと映像美をアピール。黒沢さんは「アサの人生にいろいろなものを託して演じました。受け取っていただきつつ、圧倒的な世界観を楽しんでください」と演じた役柄に愛情を傾けた。最後にはみんなで劇中のモブ女中のお面を持った観客と一緒にフォトセッション。大盛況のイベントは幕を閉じた。
🎦 作品情報
🔘『劇場版モノノ怪 唐傘』
▶劇場公開
2024年7月26日(金) 全国ロードショー
▶ストーリー
大奥とは、男子禁制の
“女の園
”であり、重要な官僚機構でもある特別な場所。この地に、新人女中のアサ(黒沢ともよ)とカメ(悠木碧)が足を踏み入れる。キャリアアップを図る才色兼備のアサ、憧れの大奥に居場所を求めるカメ。正反対の二人は初日から、集団に染まるための
“儀式
”に参加させられる。御年寄の歌山(小山茉美)は、大奥の繁栄と永続を第一に考え女中たちをまとめあげるが、無表情な顔の裏に何かを隠している。そんな中、少しずつ、彼女たちを覆っていく
“何か
”。ついに決定的な悲劇が起こり、薬売り(神谷浩史)はモノノ怪を追って大奥の中心まで進むが、モノノ怪を斬り祓うことができる退魔の剣は「形」「真」「理」の三様が揃わなければ、封印を解き抜くことが叶わない。薬売りが大奥に隠された恐ろしくも切ない真実に触れるとき、退魔と救済の儀が始まる──。
▶スタッフ
監督:中村健治
キャラクターデザイン:永田狐子
アニメーションキャラデザイン・総作画監督:高橋裕一
美術設定:上遠野洋一
美術監督:倉本章、斎藤陽子
美術監修:倉橋隆
色彩設計:辻田邦夫
ビジュアルディレクター:泉津井陽一
3D監督:白井賢一
編集:西山茂
音響監督:長崎行男
音楽:岩崎琢
主題歌:アイナ・ジ・エンド「Love Sick」(avex trax)
プロデューサー:佐藤公章、須藤雄樹
企画プロデュース:山本幸治
配給:ツインエンジン、ギグリーボックス
制作:ツインエンジンEOTA
▶キャスト
薬売り:神谷浩史
アサ:黒沢ともよ
カメ:悠木碧
北川:花澤香菜
歌山:小山茉美
大友ボタン:戸松遥
時田フキ:日笠陽子
淡島:甲斐田裕子
麦谷:ゆかな
三郎丸:梶裕貴
平基:福山潤
坂下:細見大輔
天子:入野自由
溝呂木北斗:津田健次郎
©ツインエンジン