2025年10月に神戸・ワールド記念ホールで幕を開けた水瀬いのりさんの10thアニバーサリーライブツアー「Travel Record」。そのファイナルとなる神奈川公演2daysが、2024年11月29日(金)・30日(土)に横浜アリーナで開催された。
開演時刻を迎えると会場の照明が暗転。同時に客席中のペンライトが水瀬さんのイメージカラーであるブルー一色に染まり、オープニングムービーがスタートする。真っ白な空間を一人で歩む彼女が手にしていたフラッグを突き立てて振り返ると、自然あふれる景色が魔法のように広がっていく。そうして彼女がこれまで歩んできた道のりの豊かさが示されると、2階建てステージの上段、風船のように浮かぶカラフルな円形パネル越しにシルエット姿の水瀬さんが登場。「ファイナル楽しんでいきましょー!」と元気よく声をかけると、デビュー曲「夢のつぼみ」でライブは幕を開けた。
この選曲とシルエット演出、さらに彼女が着用していた白いワンピース衣装は、2017年12月に行われた1stライブ「Ready Steady Go!」をオマージュしたもの。しかし単なる再現ではなく、ステージの背面全体を覆った超大型LEDスクリーンによる映像演出や、この10年で新たな仲間が合流して厚みを増したいのりバンドのパワフルな演奏、それらの迫力に負けない程の頼もしさを獲得した水瀬さんの歌声は、10年の歩みを経た今だからこそ届けられるもの。
はじける炭酸のようなビジュアル演出が爽快感と透明感をアップさせた「まっすぐに、トウメイに。」、タオルを回しながらセンターステージで歌った「Ready Steady Go!」と、冒頭から勢いあるナンバーを連発。MCでは応援してくれるみんなへの感謝の気持ちを伝えつつ、「時にはセンチメンタルに、時にはかっこよくステージを届けるので、ついてきてくれたらと思います!」と意気込みを伝える。そして自身が作詞した「Catch the Rainbow!」、躍動感あふれる「春空」を届けると、一旦ステージを後にした。
バンドメンバーによるインスト演奏を挟んでターコイズカラーの衣装に着替えた水瀬さんが再登場。
“君のそばで笑う未来
”を願う「アイマイモコ」を笑顔を浮かべながら溌溂と歌唱。さらに最新作「Turquoise」より高揚感と優しい視座を併せ持ったドラムンベース調の「まだ、言わないで。」で新たな表情を覗かせる。
本ツアー恒例のバンドメンバーの
“行ってみたい旅行先
”をテーマにしたトークで和気あいあいとした時間を作りつつ、ここからは新曲のバラードを続けて披露。センターステージで全方位のファンを見渡しながら出会いの感謝を噛み締めるように歌った「アニバーサリー」、黄金の光が舞うような迫力の映像演出が楽曲のスケール感を強調した「My Orchestra」。そして過去のライブ映像やMCの音声をインサートしながら、彼女の10年の歩みをイラストなどで形にしていくブリッジムービーを挿み、ライブは早くも後半戦に差し掛かる。
パンツスタイルのスタイリッシュな衣装に着替えた水瀬さんが、リフターで2階ステージに颯爽と姿を現し、まずは「Starry Wish」を。さらに「スクラップアート」「NEXT DECADE」と激しい楽曲が続く。
MCでは、この10年、時に不安を抱くこともあったことを素直に告白しつつ、「
“好き
”だからずっと真剣に向き合ってきたアーティスト活動でした」と、ここまで続けてこれた感謝の気持ちを伝える。「これからもずっと、何十年だって続くように、次の曲を歌いたいと思います」と告げると「Turquoise」収録の新曲「海踏みのスピカ」を披露。ラストのフレーズではファンも共に合唱し
“どこまでも君と一緒に
”という約束を確かめ合う。続く「TRUST IN ETERNITY」のでは力強いステージングも心を震わせると、幕間映像を挿んでステージに紗幕が降ろされる。
ピアノのしとやかな調べに導かれて、紗幕の向こうに黄色いドレスを着た水瀬さんが浮かび上がる。まるで深海にいるかのような演出のなか歌われたのは「BLUE COMPASS」。楽曲の後半で紗幕が落ちると視界が一気に広がり、
“どこまでもいっしょに
”という願いを、会場のひとりひとりに想いを届けた。
続いてセンターステージで歌われた5周年記念シングル表題曲「Starlight Museum」では、途中で涙ぐんで声を詰まらせる場面も。MCに入っても涙が止まらず、「次に歌う曲ももれなく泣いちゃうかもね」と話して歌い始めたのはファンとの絆をテーマにした2ndシングル表題曲「harmony ribbon」。「みんなの声を聴かせて!」と呼びかけると、アリーナ中がひとつになって「ラララ〜♪」という歌声に包まれた。「私たちだけのこの10年を、この曲に込めて咲かせたいと思います」と語ると、夢への純粋な想いを込めた心洗われるミディアムバラード「Innocent flower」を心から嬉しそうな表情と共に届け、ライブ本編を締め括った。
盛大な
“いのりんコール
”を受けてのアンコール。いのりバンドが演奏とクラップで盛り上げるなか、過去のライブ前の円陣の様子を全公演分繋いだ千秋楽だけの特別映像が流れ、水瀬さんは自身考案のキャラクター
“くらりちゃん
”のトロッコに乗って登場。2ndハーフアルバム表題曲「Turquoise」を歌いながらアリーナを周遊する。場内を半分ほど回ったところで「Million Futures」を皮切りに自身初となるメドレーへと移行。引き続きトロッコに乗りながら「HELLO HORIZON」、メインステージに戻って「フラーグム」「glow」を連続で届ける。この演出はできる限りたくさんの楽曲と共に10周年ツアーを回りたい、という彼女自身の発案で実現したもの。
告知コーナーを挟み、「自信をもってみんなに言える言葉を書きました。ぜひそんな気持ちを受け取ってほしいです!」と前置きして歌うのは、自身で作詞した「Turquoise」収録の新曲「夢のつづき」。最後には銀テープが発射されて華やかにライブは幕を閉じた。
しかし客席からの「もう一回!」コールに応えてダブルアンコールが実現。「もう1曲、みんなと一緒にひとつになりたいと思います」と話すとマイクスタンドを持ち出し、観客からはどよめきと歓喜の声が上がる。「この言葉が、未来でこんなに私たちの希望になってくれるなんて、本当に幸せです。みんなで一緒に神話を作りましょう!」と勇ましく告げて歌うのは「僕らは今」。これは中止になった2020年のツアーの横浜アリーナ公演で、みんなと一緒に歌う予定だった楽曲。冒頭の一節を歌い終えた後、涙ぐみそうになりながらも拳を掲げて自身を奮い立たせ、勇気と連帯の歌を届ける。2番ではハンドマイクを握ってセンターステージへ。アリーナ中からの大合唱の声を全身で受け止め、最後は「これからも幸せな時間を重ねていきましょう、約束!」「10年の思いを込めて飛びましょう!」と呼びかけた。
【セットリスト】
01.夢のつぼみ
02.まっすぐに、トウメイに。
03.Ready Steady Go!
04.Catch the Rainbow!
05.春空
06.アイマイモコ
07.まだ、言わないで。
08.アニバーサリー
09.My Orchestra
10.Starry Wish
11.スクラップアート
12.NEXT DECADE
13.海踏みのスピカ
14.TRUST IN ETERNITY
15.BLUE COMPASS
16.Starlight Museum
17.harmony ribbon
18.Innocent flower
《アンコール》
19.Calling Blue(overture)〜Turquoise
20.Million Futures→HELLO HORIZON→glow
21.夢のつづき
22.僕らは今
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セットリストプレイリストが公開中
Photo by 加藤アラタ(Kato Arata)/三浦一喜(Miura Kazuki)