福圓美里さんと松崎亜希子さんによる演劇ユニット
“乙女企画クロジ
”。その第9回公演『エンガワノクラゲ』が、新宿SPACE107にて、5月13日(木)〜16日(日)の日程で全7公演行われた。
舞台は海沿いの古びた家。そこには漫画家・みつる(波多野和俊)の内縁の妻・多美(能登麻美子)、みつるの弟・ゆくを(藤波瞬平)、なぎこ(福圓美里)の3人が暮らしていた。しかし、彼女らを結びつける存在のみつるは、もうこの世にいない。不自然な共同生活を送る彼女らの前に、突然、多美の義弟・敦(武藤啓太)が現れる。敦はかつて、多美を襲った自分の父親を殺してしまったと思い、長らく行方不明になっていたのだが――。みつるを失った穴を埋めきれずにいるゆくを。夫を失ったにも関わらず平静な多美に、苛立ちを覚えるなぎこ。さらに突然現れた敦や、敦を追いかけてきた倫子(松崎亜希子)に生活を乱され、不満はますます募っていく。やがて物語は進み、敦は父親を殺していなかったという事実を知り、心の平穏を取り戻す。ゆくをは兄の死を乗り越え、漫画家として独り立ちしようとする――。みんなそれぞれに答えを見つけ、かろうじて
“家族
”の形を保っていてこの集団が散り散りになろうとしたとき、多美がこれまで押さえつけてきた
“独りになることへの恐怖
”が堰を切ったように噴き出し、感情を爆発させる。そんな多美に驚き、戸惑い、呆れつつも、彼女らは再び不器用ながら
“家族
”という形に収まっていく――。
複雑な事情の家庭に生まれ、心に負った暗い陰を心の奥底に沈めようと、感情を押し殺して生きてきた多美、親殺しの過去に縛られていた敦、そんな二人とは正反対に、感情を剥き出しにて生きているなぎこや倫子――。そんな個性溢れる役柄を、能登さん、門脇さん、福圓さんをはじめとする役者陣が熱演。公演は大成功を収めた。全ての公演を終えたクロジのお二人に、この公演を振り返って、そして次回の公演に向けてのコメントをいただいた。
――第9回公演を終えて
「作・演の森さんが2年前から温めていたプロットをベースに、これまで出会った人たちの個性や力をお借りして作り上げた作品です。大きな挑戦はしなかった分、演技も質感も雰囲気もスタッフも限られた時間の中で出来るだけレベルを上げることに集中しました。現代劇は共感も呼びやすい分嘘もバレやすく、最近の小劇場の主流ということもあってお客様も見慣れているし、どこかにクロジらしさを、そしてご覧頂いた方の心臓に突き刺さるように…と試行錯誤の毎日でした。家族をテーマにしたこともあってか、年配のお客様に評判が良かったのは今までのクロジにはないことで、とても嬉しく思っています。家族って、辛いことも苦しいことも、解決してあげられなくても傍に寄り添って、同じ気持ちでごはんを食べて、何があっても帰れる場所を作って待っている関係なのだと思います。その暖かさがラストシーンから少しでも伝わっていたら幸いです」
――第10回公演に向けて
「次回はいよいよ10回です。全くの制作素人でも気合いがあればここまで続けられるものなんですね。たくさん怒られました。泣きました。そんな今までの集大成ともいえる第10回! かなり気合いが入っています。劇場は前回公演でも使用したシアターサンモール。とても綺麗で300人ほど入る劇場です。何をやろうかすでに会議を始めています…。楽しみにしていて下さいっ!」
■キャスト
三浜多美:能登麻美子
徳本敦:武藤啓太
俵井みつる:波多野和俊
俵井ゆくを:藤波瞬平
俵井なぎこ:福圓美里
星野倫子:松崎亜希子
鴨原新:中津川朋広
多美(少女):門脇舞以
敦(少年):橋本昭博
敦の父親:竹田雄
編集長・北川温海(声のみ):木村はるか
作・演出:森 悠
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