『さよなら絶望先生』シリーズ、『かってに改蔵』、『電波女と青春男』、『荒川アンダー ザ ブリッジ』など、スターチャイルド×シャフトのタッグがこれまで生み出してきた数々のヒット作にて主題歌を担当してきたアーティストたちが一堂に会してのスペシャルライブ「SCR×SHAFT ANIMATION THEMES LIVE『咲く乱状態in日比谷野音2011』」が、4月23日(日)、日比谷公園大音楽堂にて開催された。このイベントのオフィシャルレポートが到着したので紹介しよう。
会場は開演前から観客で溢れ返り、作品が好きなアニメファンからアーティスト目当ての音楽ファンまで、イベント開演を今か今かと待ちわびる熱気に満ちていた。そんな中、いよいよライブがスタート。まずは『夏のあらし!』のオープニングテーマ「あたしだけにかけて」を歌った面影ラッキーホールが登場。土臭いファンクサウンドにキワどい歌詞を乗せたアンダーグラウンドな世界観が魅力のバンドだ。1曲目の「今夜、巣鴨で」から観客は総立ち。濃厚なグルーヴに皆が心地よさそうに身を委ねていた。次は、アニメファンならおなじみの「あたしだけにかけて」。サビのパートではボーカルの佐々木
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”あきひ郎の動きに合わせて、この日販売されたオフィシャルタオルを大勢の観客が頭上で振るなど、すでに会場は一体感で包まれていた。さらに「パチンコやっている間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた...夏」「俺のせいで甲子園に行けなかった」と2曲を続けて披露。毒気を孕んだライブパフォーマンスに開始まもない会場は早くも大盛り上がり。盛大な拍手と歓声を背中に受けて、面影ラッキーホールの面々がステージを後にした。
今回のイベントは次のアーティストの機材セッティングが行なわれる間、漫才師で声優経験もあるアメリカザリガニの2人が幕間にMCを務めていた。抜群のトークスキルをもちながら、アニメにも造詣が深いアメリカザリガニは、まさに今回のイベントのMCに最適といえるだろう。アニソン漫才から巧みな客いじり、はては会場物販にも目を向け笑いに変えてしまうなど八面六臂の活躍をみせていた。
機材セッティングが整うと、『荒川アンダー ザ ブリッジ』のエンディングテーマを担当したスネオヘアーが登場した。1曲目「逆様ブリッジ」のように、会場はすでに落日を迎えようとしていたが、夕暮れ時の寂しさにスネオヘアーの切ないメロディが絡み合い、会場に響き渡っていた。さらに「アメザリが(自分の登場を)盛り上げてくれたけど、そんなに盛り上がる曲はないんだ」とスネオヘアーらしい一癖あるジョークを交えつつ、アニメの主題歌つながりということで「ワルツ」を披露。スタチャ×シャフトの曲ではないが、儚く美しいメロディに観客は聞き惚れた。また、MCではキューピーコーワゴールドのギャグを繰り返して会場に笑いを起こしていたのも印象的だ。最後は『荒川アンダー ザ ブリッジ』2期エンディングテーマ「赤いコート」。今回のイベントでは数少ない、じっくりと曲を聴かせるセットリストで観客を魅了したスネオヘアー。「夏にアルバムが出ます……2年後の夏だけど」と言うも、実は本当にニューアルバムを今夏発売に向けて制作中とのこと。
その後、アメリカザリガニのMCを挟んで3番目のアクトとして登場したのが、エリオをかまってちゃんこと、神聖かまってちゃん feat.藤和エリオ(CV.大亀あすか)。神聖かまってちゃんの面々に続き、藤和エリオのコスプレ(?)をしたエリオ役の大亀あすかが登場。ちなみにドラムスのみさこも、シャフト制作ではあるがスタチャとは関係のない、某魔法少女アニメのコスプレで登場した。そして『電波女と青春男』の主題歌「Os-宇宙人」と、そのc/w「コタツから眺める世界地図」を2曲続けて演奏。大亀の独特なボーカルと、神聖かまってちゃんの狂ったようにかき鳴らされる過剰なサウンド。ゼロ年代の気鋭のロックバンドと、アニメ声優の邂逅が生んだ突然変異のステージに、観客は戸惑いと興奮が入り乱れた感動に圧倒されていた。曲の合間で、みさこが「アニソンやるならシャフト作品がいいと言ってたんだけど、大人の事情で難しいと言われ魔女になりかけたら向こうから声をかけてきてくれました」と嬉しそうにコメントしていた。そして、2曲の演奏が終わり大亀は退場。「このあと1曲、好きにやらせてもらえるということなので」とボーカル・の子のMCから「学校に行きたくない」の演奏が始まり、爆音のノイズサウンドが弾けた。演奏終了後、「言っとくけど、これが俺の300%だから」と言い放ったの子。それはの子の捨てゼリフでありながら、照れ隠しのようにも思えた。
神聖かまってちゃんのステージが終わると、アメリカザリガニが再び登場。ここで5月25日(水)に発売されるOVA『かってに改蔵』上巻から、なんと第1話のAパートが特別上映されるという嬉しいサプライズ。この上映会の特別ゲストとして登場したのが、勝改蔵役の櫻井孝宏と名取羽美役の喜多村英梨。すっかり陽が落ちて肌寒くなってきた野音だが、喜多村は「オレが暖めてやるよ〜」とステージを走り回るなど、テンションMAXな状態。肝心のアニメの出来はどうかというアメリカザリガニからの質問に櫻井は「ある意味、素晴らしい。けれど、ある意味酷い(笑)」と意味深なコメントで観客の笑いを誘う。続いて喜多村は「原作を知っている方も楽しめると思います。今回上映する話の他に、羽美が強調されている話も収録されているのでお楽しみに」と語ってくれた。
上映会が終わると、次は『かってに改蔵』の主題歌を歌う、我らがアニキこと水木一郎の登場。風にたなびいているかのように固定された赤いマフラーに黒いレザースーツという、昭和ヒーローを彷彿とさせる衣装のアニキは、『かってに改蔵』の主題歌「かってに改造してもいいぜ」を熱唱。オーケン節ともいえる歌詞とメロディに、アニキの低音ボイスが叩きつけられる。気がつくと、客席には先ほどまでちらほら見えていただけのサイリュームが次々と灯され、まるで光の花が咲いているようだった。「かってに改造してもいいぜ」を歌い終わると、オーケンこと大槻ケンヂがステージに登場。かつて筋肉少女帯と水木一郎名義でリリースされた「221B戦記」でコラボレーションして以来、お互いにリスペクトしているという2人。久しぶりの再会を懐かしみながらトークを展開し、会場を沸かせた。さらにc/w曲「ヌイグルマー(縫製人間ヌイグルマー)主題歌」をオーケンとともに合唱。演奏直前「電人ザボーガーの次はヌイグルマーを映像化してほしいものですね」と笑っていたオーケンは、このあと自分のステージを控えながらも、憧れのアニキとのデュエットにのっけからトップギアで熱唱していた。アニキも負けじと歌声を張り上げてボーカルを重ねていく。歌っている途中で雨が降るという天候の乱れもあったが、観客もステージも気にすることなく盛り上がる。まさに「雨の野音」だ。